委員 久保 千春

養生訓、心身医学に繋がる

 私は心身相関に興味を持ち、心理社会的ストレスが体のホメオスタシス系(神経・内分泌・免疫系)に及ぼす影響についての研究を行いました。病気は素因と人生体験(環境因子)の結晶です。環境因子は食事、睡眠、運動などの生活習慣や心理社会的ストレス、細菌、ウィルスなどの微生物、放射能、発癌物質などがあります。これらの中で、ストレス、栄養、睡眠が病気の発症や経過に及ぼす影響について基礎研究を行ってきました。自己免疫病発症マウスを用いて通常では10ヶ月で死亡するネズミをカロリー制限(通常飼育の6割のカロリー摂取量の低栄養)することにより、寿命は2倍にさらに脂肪摂取を制限することにより、3倍に延びることを明らかにしました。貝原益軒の七大養生訓の中に“飲食を節して、胃気を養う”、“ 怒りを押さえて、肝気を養う”、“ 思慮を少なくして、心気を養う”などがあり、食事や心理的因子の重要性を述べています。これはまさに心身医学に繋がっています。


1973年九州大学医学部卒業。82年米国オクラホマ医学研究所にて栄養と免疫・老化の研究。93年九州大学心身医学教授。2008年九州大学病院長。14年九州大学総長、20年中村学園大学学長。

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